jaranpon-完

ジャランポン祭りのお話し、根気良くお付き合いを頂きありがとうございました。
今日が最終回です。
jaraーn・poーn
公会堂の中はガヤガヤと地元の人やカメラマン達で賑やかだった。
やがて区長さんという人の挨拶があり、坊さん役の小吉さんや死人役の
ガンさんなどが続いて挨拶した後に、このお祭りの最大の見せ場である
お葬式が始まり、僕と父は運良く祭壇の前の方に座ることができた。
棺桶に一升瓶を抱えたままガンさんが横たわると、いっせいに小坊主達が楽器を
打ち鳴らし、小吉さんがお教を唱えだした。
「ナンマンダーブ・ナンマダーブ 今日のホートケさんはガキ大将だった
イワタのヤスユキだー ゾークショウガンチャンワー ガーキノコロカラ
イジワルでー、オーレタチカーキューセイヲイージメター トートー
ソノバチデー エーンマダイオウニーヨバレタヨー」
会場のアチコチからクスクスと笑い声が聞こえるが、まだ笑いを堪えている様だ。
「ナンマンダーブ・ナンマンダーブ オトナーニナッテーモー ナカミーワー
ガキノママー ナニカートークチウルセー イーマジャー キンジョーノ
ハナツマミモンー」
棺桶がガタガタ揺れて蓋をガンガンと中から叩く音が聞こえる。
そして、一瞬間を置いて「プウー

「ナンマンダーブー・ナンマンダーブー イマホートケサンガヘヲコイター
ドクーガスダカラー コーレデホトケモ ホントニオダブツダー」
それまでクスクス笑いだった会場が、とうとう堪えきれずに大爆笑の渦となった。
すると、突然棺桶の蓋が吹っ飛び、仏さんが上半身を起こして肩で息をした。
「臭っせー、てめえの屁で本当に窒息するトコだったい」
仏役のガンさんが自分の鼻をつまんで喋り、
「小吉、てめえもっとまともなお経を上げろ、それじゃ仏は成仏出来ねえぞ」
と喚き、自分で蓋をして又、棺桶の中に隠れた。
もう、会場はワッハッハー・アッハッハー ジャランポーンの大騒ぎ。
その後もいい加減なお教が続き、その度に仏さんは棺桶の壁をガツンガツンと
叩いている。そして、お母さんの言っていた飲み屋のママさんがどうの何てお経
が始まるとついには仏さんが立ち上がり、
「このクソニセ坊主めー」
会場は死人とお坊さんの鬼ごっこの場と化す、その年はハチャメチャなお祭りだった。
「ツヨシ、オーイ、ツヨシー聞いてるかぁ・・・どうだい?ジャランポンの日は
帰って来るか」
そうだ、父さんと電話中だったんだっけ。
「うん、みんなで絶対に行く。今さぁ、父さんとあの頃はまだ元気だった母さんに初め
て連れていって貰ったジャランポンを懐かしく思い出していたんだよ。そうなんだ、
今年は父さんが仏さん役をやるんだ。で、坊さん役は誰?」
「それがよう、あのガンさんなんよ。なっ、今年のジャランポンも面白くなりそうだんべ」
あぁー父さんも一応は東京生まれの江戸ッ子なのに、今じゃしっかり秩父のオッサンに
なったんだなあー。だんべー言葉が凄く板についてるね。
お仕舞い


秩父の野山はまだ冬景色っぽいけれど、よく観察すれば枯れ木の先はなんだかモヤモヤと
新芽や花の準備が整ってます。
今日、ウチの庭の枝垂れ紅梅の花が一輪咲きました。右隣りは1月から咲いてる枝垂れ黄梅です。


散歩に連れてって貰うのを日向ぼっこしながら、ジーっと待ってるタロウとジャッキー
「jaraーn・poーn」は実際にある秩父市久那のお祭り「ジャランポン」です。
ですが、今回のお話は全てヨッシーの創作です。実在する人物とは一切の関係はございません
ので、ご了承下さい。
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