Jara~n・po~n
その日、久し振りに実家の父さんから僕に電話があった。
「ツヨシ、来月11日の日曜日は非番か?」
今、僕は都内の消防署に勤める救急隊員であり、救命士をしている。
手帳をめくって確認すると、その日は前日の10日と合わせた
明け/公休日であった。
久しぶりの土日がフリーなので妻や娘の沙耶香にディズニーや遊園地
をせがまれることは必至だ。
「一応休みだけど、何か用かい? 母さんへの墓参りならちゃんとお彼岸中
に予定してるけど」
「そうか、わざわざ月に二度も秩父へ来るのは億劫か?」
「そんなこともないんだけどさ・・・沙耶香にどうせ、ディズニーに連れてけ
ってせがまられると思ってさ。で、しつこいけどその日は何かあるの?」
「葬式」
「へ?・・いま何て言った」
「俺の葬式をやるんだよ」
「父さん、冗談言わないでよ。いくら母さんが亡くなって寂しいいからって
もう10年も独りで頑張ってきたんだから。それに救命士の親父が自殺しちゃ
ダメでしょ」
「オイオイ、慌てるない。誰が自殺するって」
「今、俺の葬式するって言ったじゃん」
「じゃらんぽん・・・」
「えっ?」
「今年は3月11日に祭りをやることになってて、俺が仏様を演るんだよ」
久し振りに聞いたその懐かしい言葉の響き「ジャランポン」
僕の脳裏に20年前のあの日の光景が甦る。
小学校の2年生まで、僕の家族は都内の下町で暮らしていた。
家族といっても、両親と僕の3人だけである。
母も僕も虚弱体質で、特に僕は喘息などもあり学校も休みがちだった。

ある日突然父が
「こんな空気の汚れている場所で暮らしていると剛の喘息も治らないから、
もっと空気の綺麗な場所にみんなで引っ越すぞ」
と言って、現在の実家のある埼玉県秩父市に貸家を見つけ引越したのだ。
それから数年、父は貸家と同じ地区に土地を手に入れ、家を建てた。
僕は学校までの、坂の多い2kmの徒歩通学で体が鍛えられ、越して半年程で
喘息持ちだったことなどウソの様に丈夫になり、地元のガキ大将達と一緒に野山を
駆け回っていた。
これは僕がもう少し大人になってから母に聞いた話しだが、秩父に越して
わずか数年で家を建てられたことは、両親が本当にこの地で良き友人や隣人
に恵まれた為だったらしい。
何しろ、ウチの一家は引っ越して来たとき、その費用で僅かな貯蓄を遣い果たし
ほぼ無一文になっていたのだから。

疲れたから続きは次回です To be continued
「ツヨシ、来月11日の日曜日は非番か?」
今、僕は都内の消防署に勤める救急隊員であり、救命士をしている。
手帳をめくって確認すると、その日は前日の10日と合わせた
明け/公休日であった。
久しぶりの土日がフリーなので妻や娘の沙耶香にディズニーや遊園地
をせがまれることは必至だ。
「一応休みだけど、何か用かい? 母さんへの墓参りならちゃんとお彼岸中
に予定してるけど」
「そうか、わざわざ月に二度も秩父へ来るのは億劫か?」
「そんなこともないんだけどさ・・・沙耶香にどうせ、ディズニーに連れてけ
ってせがまられると思ってさ。で、しつこいけどその日は何かあるの?」
「葬式」
「へ?・・いま何て言った」
「俺の葬式をやるんだよ」
「父さん、冗談言わないでよ。いくら母さんが亡くなって寂しいいからって
もう10年も独りで頑張ってきたんだから。それに救命士の親父が自殺しちゃ
ダメでしょ」
「オイオイ、慌てるない。誰が自殺するって」
「今、俺の葬式するって言ったじゃん」
「じゃらんぽん・・・」
「えっ?」
「今年は3月11日に祭りをやることになってて、俺が仏様を演るんだよ」
久し振りに聞いたその懐かしい言葉の響き「ジャランポン」
僕の脳裏に20年前のあの日の光景が甦る。
小学校の2年生まで、僕の家族は都内の下町で暮らしていた。
家族といっても、両親と僕の3人だけである。
母も僕も虚弱体質で、特に僕は喘息などもあり学校も休みがちだった。

ある日突然父が
「こんな空気の汚れている場所で暮らしていると剛の喘息も治らないから、
もっと空気の綺麗な場所にみんなで引っ越すぞ」
と言って、現在の実家のある埼玉県秩父市に貸家を見つけ引越したのだ。
それから数年、父は貸家と同じ地区に土地を手に入れ、家を建てた。
僕は学校までの、坂の多い2kmの徒歩通学で体が鍛えられ、越して半年程で
喘息持ちだったことなどウソの様に丈夫になり、地元のガキ大将達と一緒に野山を
駆け回っていた。
これは僕がもう少し大人になってから母に聞いた話しだが、秩父に越して
わずか数年で家を建てられたことは、両親が本当にこの地で良き友人や隣人
に恵まれた為だったらしい。
何しろ、ウチの一家は引っ越して来たとき、その費用で僅かな貯蓄を遣い果たし
ほぼ無一文になっていたのだから。

疲れたから続きは次回です To be continued
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まとめteみた【秩父つれづれ日記】
その日、久し振りに実家の父さんから僕に電話があった。「ツヨシ、来月11日の日曜日は非番か?」今、僕は都内の消防署に勤める救急隊員であり、救命士をしている。手帳をめくって確認すると、その日は前日の10日と合わせた明け/公休日であった。久しぶりの土日がフリ?...