みなしごジャックの大冒険(完)
今度のシリーズ、今回が最終回ということで少し長くなりそうです。
最後までお付き合いを頂きありがとうございました。
どうやら犬たちに帰り道を教えてくれた観音様のお寺は皆野町日の沢にある
秩父札所34番の水潜寺だったようです。(本尊は千手観世音菩薩)
タロー&ジャック 少しづつですが、確実に家に近づいていますね。
その朝もまだお日様が昇る前にボクたちは出発した。
「兄ちゃん 観音様が教えてくれた沢ってこれに間違いないよ」
「うん 実は前に父ちゃんと来た時はこの沢の上流にある峠の向こう側に車を
停めて歩いてきたんだよ」
手がかりをつかんでボクの気持ちは明るくなった・・・お腹は空いてるけど
「もう峠まであと少しだからジャックがんばろう」
兄ちゃんが励ましてくれているとき、その峠の方から女の人たちの悲鳴が聞こえた。
ボクが急いで駆け付けると、真っ黒いクマ公が女性に襲い掛かる寸前のところだ。
ボクは無我夢中で吠えながらクマの背中に体当たりしてやったんだ。
そしたらそいつ、今度はボクに向かってきた。
恐かったけどボクは四つ足を踏ん張って唸り声をあげた。
兄ちゃんもすぐに追いついてきてボクに気を取られてるあいつの背後からおケツを
ガブっておもいっきり噛みついた。
そのときあいつの鋭い前足の爪が兄ちゃんの左前足をひっかけてみるみる兄ちゃんの
白い前足が真っ赤に染まっちゃった。
それでもボクたちがひるまずに吠えまくったのであいつは山の中に逃げてっちゃったよ。
たぶん母親から独立したばかりのまだ若いクマ公さ。
「へへーどうだー イザとなればボクたちは強いんだぞー 兄ちゃん前足大丈夫?」
「うん、傷は浅いよ こんなのかすり傷さ」
女の人はまだ震えていたけれど
「ありがとう あなたたちが来てくれなかったら わたしはあのクマに殺されてたかも・・・
この背中のリュックに入ってるお弁当を狙われたのね」
そしてもうひとりの女の人が兄ちゃんの怪我した前足をハンカチでしばりながら
「こんな山の中で犬に助けてもらうなんて ああ~あなた達はきっと観音様の化身だわ」
とかなんとか言っちゃってる。
(そんなに感心しなくてもいいから、ボクたちお腹が空いてるんだよう なんか食べ物を
頂戴よ)
ボクの願いが通じたらしく女の人はリュックからおせんべいを出して一枚ずつボクたちに
くれた。あんまりがっついて食べるもんだから
「あらあら相当お腹が空いてるのね 良かったらお弁当もどうぞ」って
ラッキー人助けはするもんだね。
「じゃあ わたし達は巡礼の締めくくり、水潜寺へお参りに行くわね わんちゃんたちも
一緒に行きましょう」
ってボクたちが登ってきた道を下り始めました。ボクが付いて行こうとすると
「ジャック そっちじゃないよ ボクたちの家はあっちだろ」
兄ちゃんに言われて仕方なく巡礼の女性たちにさようならをしました。
「兄ちゃん足はほんとに大丈夫」
兄ちゃんと並んで沢の水を飲んでいると、今度は頭上で野鳥たちのさえずり(噂話し)が
聞こえた。
「なんでも向こうのお山・定峰峠のふもとにある里の峰さんていうお宅のわんちゃん
が城峰山で迷子になって峰さん夫婦がすごく心配してるんですって」
「そうそう それってあっちでその峰さんにエサの少ない冬のあいだお世話になってる
わたし達の仲間からの伝言でしょ」

「ねえ あの沢でお水を飲んでるわんちゃんたちがそうじゃないの」
「鳥さんおはよう いまの話しってほんとう?」
「あら やっぱりあなたたちがタローさんとジャックなの」
「うん」
「クマとの格闘すごかったわ でも良かったわねー ふたりとも無事で もう安心よ
わたしたち野鳥のネットワークを使って帰る道中ごと そのなわばりの仲間の鳥が
あなたたちに家の方向を教えるようにしてあげるから」
「やったー 鳥さんありがとう」
こうしてその後は道に迷うことなく家に帰ることができました。
でもどうしても行かなきゃならないとき以外は大きな舗装道路を避けて畦道や
山道ばかりを歩いたし、兄ちゃんの怪我もあったから それからまだ二日もかかっ
ちゃった。
それでね・・・巡礼の女の人たちをクマから助けたことが翌日の新聞にお弁当を
もらって食べてるボクたちの写真付きでデカデカと載っちゃったらしいんだ。
あとから聞いたんだけど、その記事を見て父ちゃんとママリンは抱き合って喜び
父ちゃんなんか札立峠へ(クマと格闘した峠)ボクたちを探しに行くって聞かな
かったんだって
「そんな動けないギックリ腰でなに言ってるの またヘリコプター騒ぎが関の山よ
二匹を信じて家で待ちなさい」
ってママリンに諭されてやっと思いとどまったらしいよ。
「ねえ兄ちゃん なんで大通りを行かないの」
「舗装道路は足が痛くなるし 大きなトラックがいっぱい走ってるから怖いんだよ
それにお前はそそっかしいから車に曳かれたら大変だろ」
ってね
五日目の午後 いよいよボクたちは懐かしい臭いのする我が家の近くにきていた。
「ジャック あそこにお寺があるだろう あそこで観音様にお礼を言ってついでに少し
休んでいこう ここまで来ればもう大丈夫 だけど兄ちゃん足が痛くて休まないと
もう歩けないよ」

兄ちゃんの前足の傷が割れて、血がにじんでいる。見るからに痛そうだった。
「うん 兄ちゃんの足痛そうだね 舐めてあげようか」
「いいよ 自分でやるから」
ほんとうはボク 早く家に帰りたくて気持ちがそわそわしていたんだけど、ここまで来て
やっぱりボクだけ先には帰れないもんね。
注ーここは秩父札所一番の四万部寺 もう二匹の家はすぐそこ
そんなボクの気持ちを察したのか
「少し休んだからもう大丈夫 さあ父ちゃんとママリンの待っている家に帰ろう」
兄ちゃんがビッコをひきひき歩き出した。
それから30分 いよいよ家が見えてきたー
「兄ちゃん ボク先に行って父ちゃんに知らせてくるね」
ボクもお腹が空いてフラフラだったけど最後の力を振り絞って矢のように走った。
ワン ワン 父ちゃーん
デッキにいた父ちゃんはボクを見て
「ジャック おおー 心配してたんだぞー」
って抱きとめてくれた。父ちゃんの顔をペロペロしていると
タロ兄ちゃんはどうしたってキョロキョロ
「大丈夫すぐそこまで来ているよ」って教えたつもりでも父ちゃんにはワンワンとしか
聞こえないんだっけ
でも兄ちゃんの吠える声も聞こえたみたいで
「よかった よかった」ってもう顔がくちゃくちゃになってる。
(なんで今日の父ちゃんの顔はこんなにしょっぱいのかなあ)
ビッコを曳きながら歩いてくる兄ちゃんを出迎えるとボクたちを抱きしめて
「おーいママリーン タローとジャックが帰ってきたぞー」
って叫んでる。
もうボクはうれしくてうれしくってお腹が空いてることも忘れて父ちゃんに飛びついては
兄ちゃんと父ちゃんの周りをグルグルしちゃった。
お終い

最後までお付き合いを頂きありがとうございました。
どうやら犬たちに帰り道を教えてくれた観音様のお寺は皆野町日の沢にある
秩父札所34番の水潜寺だったようです。(本尊は千手観世音菩薩)
タロー&ジャック 少しづつですが、確実に家に近づいていますね。
その朝もまだお日様が昇る前にボクたちは出発した。
「兄ちゃん 観音様が教えてくれた沢ってこれに間違いないよ」
「うん 実は前に父ちゃんと来た時はこの沢の上流にある峠の向こう側に車を
停めて歩いてきたんだよ」
手がかりをつかんでボクの気持ちは明るくなった・・・お腹は空いてるけど
「もう峠まであと少しだからジャックがんばろう」
兄ちゃんが励ましてくれているとき、その峠の方から女の人たちの悲鳴が聞こえた。
ボクが急いで駆け付けると、真っ黒いクマ公が女性に襲い掛かる寸前のところだ。
ボクは無我夢中で吠えながらクマの背中に体当たりしてやったんだ。
そしたらそいつ、今度はボクに向かってきた。
恐かったけどボクは四つ足を踏ん張って唸り声をあげた。
兄ちゃんもすぐに追いついてきてボクに気を取られてるあいつの背後からおケツを
ガブっておもいっきり噛みついた。
そのときあいつの鋭い前足の爪が兄ちゃんの左前足をひっかけてみるみる兄ちゃんの
白い前足が真っ赤に染まっちゃった。
それでもボクたちがひるまずに吠えまくったのであいつは山の中に逃げてっちゃったよ。
たぶん母親から独立したばかりのまだ若いクマ公さ。
「へへーどうだー イザとなればボクたちは強いんだぞー 兄ちゃん前足大丈夫?」
「うん、傷は浅いよ こんなのかすり傷さ」
女の人はまだ震えていたけれど
「ありがとう あなたたちが来てくれなかったら わたしはあのクマに殺されてたかも・・・
この背中のリュックに入ってるお弁当を狙われたのね」
そしてもうひとりの女の人が兄ちゃんの怪我した前足をハンカチでしばりながら
「こんな山の中で犬に助けてもらうなんて ああ~あなた達はきっと観音様の化身だわ」
とかなんとか言っちゃってる。
(そんなに感心しなくてもいいから、ボクたちお腹が空いてるんだよう なんか食べ物を
頂戴よ)
ボクの願いが通じたらしく女の人はリュックからおせんべいを出して一枚ずつボクたちに
くれた。あんまりがっついて食べるもんだから
「あらあら相当お腹が空いてるのね 良かったらお弁当もどうぞ」って
ラッキー人助けはするもんだね。
「じゃあ わたし達は巡礼の締めくくり、水潜寺へお参りに行くわね わんちゃんたちも
一緒に行きましょう」
ってボクたちが登ってきた道を下り始めました。ボクが付いて行こうとすると
「ジャック そっちじゃないよ ボクたちの家はあっちだろ」
兄ちゃんに言われて仕方なく巡礼の女性たちにさようならをしました。
「兄ちゃん足はほんとに大丈夫」
兄ちゃんと並んで沢の水を飲んでいると、今度は頭上で野鳥たちのさえずり(噂話し)が
聞こえた。
「なんでも向こうのお山・定峰峠のふもとにある里の峰さんていうお宅のわんちゃん
が城峰山で迷子になって峰さん夫婦がすごく心配してるんですって」
「そうそう それってあっちでその峰さんにエサの少ない冬のあいだお世話になってる
わたし達の仲間からの伝言でしょ」


「ねえ あの沢でお水を飲んでるわんちゃんたちがそうじゃないの」
「鳥さんおはよう いまの話しってほんとう?」
「あら やっぱりあなたたちがタローさんとジャックなの」
「うん」
「クマとの格闘すごかったわ でも良かったわねー ふたりとも無事で もう安心よ
わたしたち野鳥のネットワークを使って帰る道中ごと そのなわばりの仲間の鳥が
あなたたちに家の方向を教えるようにしてあげるから」
「やったー 鳥さんありがとう」
こうしてその後は道に迷うことなく家に帰ることができました。
でもどうしても行かなきゃならないとき以外は大きな舗装道路を避けて畦道や
山道ばかりを歩いたし、兄ちゃんの怪我もあったから それからまだ二日もかかっ
ちゃった。
それでね・・・巡礼の女の人たちをクマから助けたことが翌日の新聞にお弁当を
もらって食べてるボクたちの写真付きでデカデカと載っちゃったらしいんだ。
あとから聞いたんだけど、その記事を見て父ちゃんとママリンは抱き合って喜び
父ちゃんなんか札立峠へ(クマと格闘した峠)ボクたちを探しに行くって聞かな
かったんだって
「そんな動けないギックリ腰でなに言ってるの またヘリコプター騒ぎが関の山よ
二匹を信じて家で待ちなさい」
ってママリンに諭されてやっと思いとどまったらしいよ。
「ねえ兄ちゃん なんで大通りを行かないの」
「舗装道路は足が痛くなるし 大きなトラックがいっぱい走ってるから怖いんだよ
それにお前はそそっかしいから車に曳かれたら大変だろ」
ってね
五日目の午後 いよいよボクたちは懐かしい臭いのする我が家の近くにきていた。
「ジャック あそこにお寺があるだろう あそこで観音様にお礼を言ってついでに少し
休んでいこう ここまで来ればもう大丈夫 だけど兄ちゃん足が痛くて休まないと
もう歩けないよ」

兄ちゃんの前足の傷が割れて、血がにじんでいる。見るからに痛そうだった。
「うん 兄ちゃんの足痛そうだね 舐めてあげようか」
「いいよ 自分でやるから」
ほんとうはボク 早く家に帰りたくて気持ちがそわそわしていたんだけど、ここまで来て
やっぱりボクだけ先には帰れないもんね。
注ーここは秩父札所一番の四万部寺 もう二匹の家はすぐそこ
そんなボクの気持ちを察したのか
「少し休んだからもう大丈夫 さあ父ちゃんとママリンの待っている家に帰ろう」
兄ちゃんがビッコをひきひき歩き出した。
それから30分 いよいよ家が見えてきたー
「兄ちゃん ボク先に行って父ちゃんに知らせてくるね」
ボクもお腹が空いてフラフラだったけど最後の力を振り絞って矢のように走った。
ワン ワン 父ちゃーん
デッキにいた父ちゃんはボクを見て
「ジャック おおー 心配してたんだぞー」
って抱きとめてくれた。父ちゃんの顔をペロペロしていると
タロ兄ちゃんはどうしたってキョロキョロ
「大丈夫すぐそこまで来ているよ」って教えたつもりでも父ちゃんにはワンワンとしか
聞こえないんだっけ
でも兄ちゃんの吠える声も聞こえたみたいで
「よかった よかった」ってもう顔がくちゃくちゃになってる。
(なんで今日の父ちゃんの顔はこんなにしょっぱいのかなあ)
ビッコを曳きながら歩いてくる兄ちゃんを出迎えるとボクたちを抱きしめて
「おーいママリーン タローとジャックが帰ってきたぞー」
って叫んでる。
もうボクはうれしくてうれしくってお腹が空いてることも忘れて父ちゃんに飛びついては
兄ちゃんと父ちゃんの周りをグルグルしちゃった。
お終い

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